あの話はどうなった(5) 大量輸送1979マスタープラン

タイで以前報じられた疑しげニュースが現在どうなっているか? シリーズの5回目で前回に続いてタクシン橋に関係した話です。

ここまでのあらすじ

拡張を続けるバンコク首都圏都市高速鉄道網の中央部にあるBTSシーロム線のサパーンタクシン駅、唯一単線区間に造った狭い片側ホーム駅が電車本数を今以上に増やせないボトルネックとなっている。それどころか悲劇的な事故がいつ起きてもおかしくない状況でしょう。

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そこで、なぜあんな狭い所に強引に駅を造ったのかを考えてきました。タイで最初の舗装道路のチャルンクルン通りに接し、地元民と観光客両方に重要なチャオプラヤー・エクスプレスとの接続、周辺の憧れの高級ホテルやビジネス客の利用・・・

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場所的には今の所が誰が考えてもベストです。BTSの終点がサパーンタクシン駅だった時までは大きな問題にはなっていなかったのです。それが延伸され、新線が接続され、いつの間にか高速鉄道網の真ん中でポツンと単線区間が存在し、おまけにそこに狭い片側ホームの駅が残ってしまったわけです。

ここで不思議なのはサパーンタクシン駅があるタクシン橋は外側2本が自動車用橋梁で、中央が鉄道用橋梁の3本平行する橋である事です。

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不思議でしょう・・・BTSの最初の着工は1994年で開業は1999年です。その20年前の1979年にタクシン橋は着工され1982年5月の開通です。将来、中央に鉄道専用橋梁を架けて3本平行した橋となる事を想定して・・・

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すでに大都会となっていたバンコク中央部、そのビル街に鉄道を通すのに幅がある幹線道路上に高架鉄道を通すのは道理です。サトーン通りの中央を通り、画像上の様にそのまままっすぐタクシン橋の真ん中でチャオプラヤー川を渡りクルントンブリー通りの中央を通る・・・

そんな事が出来たのはタクシン橋の中央部が鉄道用橋梁として空いていたからです。そのまま複線で線路だけ通せば良かったのですが、ついついその狭い所に駅まで造ってしまった。

それでは今回のお題「BTSを造るずっと前になぜ3本平行する橋を造ったのか?」です。

実は、3本平行している橋はタクシン橋だけではなく、チャオプラヤー川上流側にある「プラ・ポックラオ橋 Phra Pok Klao Bridge」も3本平行しているのです。

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チャオプラヤー名橋奇覧(6) プラ・ポックラオ橋」に詳しく書いてありますが、ラマ7世(ラーマ7世)の通称が「ポッククラオ」その名を冠した橋です。

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画像上で右側の橋がメモリアル橋(ラマ1世橋)で、その渋滞緩和策ですぐ横に架けられ開通が1984年12月です。前述のタクシン橋が1982年の開通ですから同時期に造られた橋です。

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私が初めてプラ・ポックラオ橋を見た時は驚きました。三本平行した橋で真ん中の橋が主桁のままで床版部が未完成なのです。これって、タクシン橋と同じですよねぇ~、ただタクシン橋はBTSを真ん中に通す事になり、プラ・ポックラオ橋はそれが成らなかった・・・

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ちなみに私がタイを離れて5年も経っているので、今の状況をGoogleストリートビューで見たら驚くべき変化をしていました。なんとコンクリートと鉄筋むき出しの床版上に公園を造ってしまいました。私がタイにいたなら真っ先に見に行ったでしょう(笑)

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いずれにしても、バンコクで初めての都市型鉄道BTSが動き出したその20年も前、鉄道がチャオプラヤー川を渡る事を想定してタクシン橋とプラ・ポックラオ橋を架けたわけです。

なぜでしょう?

私がまだタイ在住なら一週間は国立図書館通いで書士の方にお願いして資料だらけになったでしょう。今は日本なのでバンコク都庁、バンコク大量輸送システム社(BTSC)などで公開されている資料を何日も探しまくりました。

結果、出てきたのが「THE 1979 BANGKOK MASS TRANSIT MASTERPLAN」です。1979年バンコク大量輸送マスタープランは日本人の顧問によってまとめられたとあります。私が探し当てたのは英語の資料英語ですが、お役所仕事の非常に厄介な資料で読むだけでは何を言いたいのか解りません(汗)

1970年のサイアムスクエア、奥がスクムビット通りの始まり
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このマスタープランの詳細はまた別に書く機会があればと思いますが、話は1970年代前半にタイ政府が高速道路と都市鉄道の整備案を外国の力を借りて始めた事からスタートします。都市型鉄道の整備案としては紆余曲折を経てカナダのラヴァリンLavalin社のスカイトレインが(一時的に)採用され、この「スカイトレイン」はBTSを指すのに今でも使われているかと思います。

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1979年マスタープランで今回の謎解きに関係するのはラヴァリン・プロジェクトをベースとした第1段階の都市公共交通機関です。その内容は以下の三つの都市型鉄道を敷設する計画です。(路線名や路線は諸説色々でした)

1、ラマ4世線: モーチットから西へ向かいチャオプラヤー川手前で南下、ファランポーンからはラマ4世通りでオンヌットまで。現在のBTSスクムビット線とMRTブルーラインを混ぜたようなルートですね。

2,サトーン線: タラート・プルーから東に向かいタクシン橋を渡りサトーン通り、ラチャダピセーク通りで北上しラットプラオあたりまで。タクシン橋前後は現在のBTSシーロム線と同じですね。

3,メモリアル線: ダオカノン(ラマ2世通り東端あたり)からウォンウィエンヤイを経由しプラ・ポックラオ橋でチャオプラヤー川を渡りホイクワンあたりまで行きます。

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画像上は資料中比較的分かりやすい地図で、赤線が上記1のラマ4世線、緑線が上記2のサトーン線、そして黒線が上記3のメモリアル線です。点線は拡張予定です。

と言う事で、タクシン橋とプラ・ポックラオ橋が着工される1970年代後半には、すでにバンコク大量輸送マスタープランが存在し、まさしくこれから変えようとするバンコクの大量輸送システムの中に二つの橋が組み込まれ、都市型鉄道を通す事を前提とした造りになったわけです。

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画像上は1985年のタクシン橋です。手前がサトーン通り側で奥がトンブリーですが、どうも最初から3本平行で造ったわけではないようです。後から鉄道専用橋梁を真ん中に架けたのですね。

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さて、BTSサパーンタクシン駅の謎からタクシン橋とプラ・ポックラオ橋へと謎が広がり、1970年代作成のバンコク大量輸送マスタープランへと謎解きが続きました。このマスタープランはなかなか面白く、橋梁以外にもバンコクの街の中に多くの謎解きの鍵を残したように思えます。

在住時にこのマスタープランを知っていれば・・・もっと街歩きを面白くしたことでしょう。 そして、もう少し深堀してから・・・またタイに行きたくなりました(笑)

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2024.01.17 | コメント(2) | バンコク街歩き

コメント

本当に困りますね

サパーンタクシン駅、バンコク滞在でよく利用するホテルに近いので、よく乗り降りします。降りるときは、当然ながら問題は感じないのですが、乗る時は困りますね。特に、改札から階段を登って、ホームに上がった時、BTSの車両が停まっていると、乗るべきか乗らざるべきか、迷います。

2020年2月を最後にバンコクに行っていませんので、私の記憶が間違っているかもしれませんが、BTSの車両の側面には「行先」の表示が無い(見つけるのが、下手なだけかも)と思います。先頭車両の前面には「行先」がタイ語と英語で交互に示されるのは、見た記憶がありますし、当然ホームに入って来るときの方向で、どちらに行くか分かります。しかし、ホームに着いた時、停まっている車両に乗っていく人々を見ると、「行先」が分からず、焦ってしまいます。せめて、ホームに「行先」を表示する設備が欲しいと思いました(今はあるのかな?)。反対方向に乗るのは嫌なので、行先を確かめてから乗るようにしています。確かめて乗った車内で、慌てて飛び込むように乗ってくる観光客らしき人を、かなりの頻度で見ました。サイアム方面に向うときの大半は、問題がない様でした。しかし、反対方向に乗った時は、車両が動き出し、チャオプラヤ川に差し掛かると「これは、どこへ行くんだ!」と慌てだす光景を何度も見ました。 

本当に何とかしてほしいですね

2024-01-18 木 11:12:48 | URL | dai福 #- [ 編集 ]

Re: 本当に困りますね

dai福さん

コメントありがとうございます。

確かに、あの駅で慌てて電車に乗ると間違って反対方向へ行っちゃう事もありますね。

ブログ本文のは書いてないのですが、ホームの幅以外に長さもあの駅だけ短いのです。確か、今は4両編成だと思うのですが、5両になるとぎりぎりだったと思います。

駅改造工事が始まっても、橋の工事が必要なので、数年かかるでしょう。。。

工事だらけのバンコク、いったいいつになったら終わるのでしょうねぇ~

2024-01-18 木 22:50:17 | URL | ALSTER #- [ 編集 ]

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ALSTER(アルスター) 東京深川出身。アジア・ヨーロッパ・アメリカなど海外在住28年超。55歳で日本企業を早期定年退職後アメリカで現地採用され2014年末退職。その後タイでロングステイし2018年帰国。90年代前半からパソコン通信・PC改造・ホームページ運用を行い世界中からアクセス。そんな趣味から海外アクセス術、旅先通信本などの出版にも関わる。ヨーロッパ、北米、東南アジアの国々はほとんど訪れ、旅行にお酒・食べ歩き大好き人間です。

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